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2010年1月22日 (金)

金融円滑化法の影響は?

昨日は、事務所で調査事案の片付け。

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【金融円滑化法の影響は?】

1980年代に起きたバブル経済の原因は、金融機関による無謀な貸付だと言われている。

当時は、主として不動産バブルだったわけだが、利用価値の無い土地(例えば、のり面とか崖地など)であっても、それを担保に無理やり貸し込んでいたらしい。

バブルが破綻すると、そもそも担保力が無い土地だから、金融機関は大きな不良債権を抱えることになり、それを処理するのに15年もかかった。

当時、全国各地の金融機関に対して、無理やり貸し出しを増やすよう強制に近い指導をしたのが、日銀だという説がある。

これは、ドイツ人経済学者のリチャード・ベルナーが、その著書「円の支配者」の中で書いていることである。

真偽のほどはともかくとして、日銀が供給するマネーが市中に出回るには、金融機関の貸し出しを介するか、あるいは日銀が政府の借金を引き受けたり、株や土地などの資産を日銀みずから購入することで、ニューマネーが市中に流れだす。

そして、これが過ぎると、バブルが起こる。

ベルナーの著書によると、当時の日銀は、金融機関に対して貸し出しの伸びが悪いところについては、追加の貸し出しに応じないとして、融資量を無理やり増やしたという。

日銀の支店の窓口で、金融機関の担当者(日銀担)に対して、口頭で指導したことから、これを「窓口指導」というらしい。

1997年に大蔵省から分離した金融庁(当時は金融監督庁)は、全国各地の金融機関が貸し出しを行う際の要綱をまとめた「金融検査マニュアル」を大改訂し、容易に貸し出しができないよう、指導を徹底した。

このとき、いわゆる「貸し渋り」や「貸しはがし」が横行した。

当時、私が監査で担当していた先も、大企業であったにも関わらず、貸し渋りを受けたことがあった。

1980年のバブルのときは、日銀が景気の主導権を握っていたわけだが、1997年に金融検査マニュアルが大改訂されて、どんなに日銀がマネーを供給しようとしても、その先にある金融機関が貸し出しを増やせない状況が続き、ここまでずっと地方経済の不景気が続いている。

ちなみに、小泉内閣の時代には、日銀が福井総裁のもと、資産の直接購入をやったり、財務省が米国債を大量に購入して、世界的なバブル経済の原因になった。

これはサブプライムローン問題が発生するまで続いた。

さて、前説が長くなったが、上記を説明しないと、以下の話が理解してもらえないのだが、昨年12月に成立した金融円滑化法は、一言でいえば、全国各地の金融機関に対して、貸し出し要件を事実上、緩和するものになっている。

つまり、1997年の金融検査マニュアルの大改訂による、金融引き締めの逆の政策が行われたということだ。

経済の原理原則から言って、市中にお金が出回りやすくなると、景気が回復し、ときにバブルの発生につながる。

ここまで冷え込んだ景気だから、「完全回復」とまではいかないかもしれないが、私はこの法律が地方経済を当面の間、下支えしてくれるものと予想している。

世界的には、今、金融緩和の終了(いわゆる出口戦略)が言われるようになっていて、徐々にではあるが、金融危機が収束に向かいつつあるのは間違いない。

亀井大臣の提唱した、「返済猶予」は、おそらく亀井大臣の言動に関係なく、金融庁が準備していたものだと思う。

再びバブル経済がやってくるのか!? 今、この冷え込みようからは考えにくいかもしれないが、私は、そういうこともあり得るのではないかと、少し、頭の片隅に入れておくのがいいと思っている。

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コメント

興です。ご無沙汰しています。さて、今回の記事について、ご教示頂ければと思います。

今回の記事の趣旨は、金融円滑化法によって金融機関が貸出しを増やす姿勢に転じると言うことだと思います。しかし、消費が低迷し、需要が増えない中で いくら銀行が貸出しを増やしても、企業は十分な利益を上げる事が出来ず、その結果、借入金の返済原資に窮して、企業経営が危うくなる事にもなりませんか?。私はその様に思うのですが、いかがでしょうか?

やはり消費を刺激する為には、アメリカの様に、個人がお金を借りやすくならないとダメなように思います。しかし、日本のコンシューマー・ファイナンスの現状は、出資法の改正もあって、厳しいですね。

投稿: 興 | 2010年1月23日 (土) 16時07分

金融円滑化法は金融機関が資金供給と言うよりは、企業の償還猶予により、結果的に資金対応と同等の効果が企業の側に出ると考えます。金融検査マニュアルの貸出条件緩和債権認定基準の大幅な緩和は各金融機関の貸し倒れに対する引当金の相当な減少に繋がり、金融機関は対応しやすくなるのは間違いありません。しかし、景気の回復にはさほど効果がないのでは、と思っています。

投稿: 会社員 | 2010年1月23日 (土) 16時39分

興さま

いつも鋭い質問をありがとうございます。
今のところ、今回の措置だけで景気が回復するところまで行くとは、私も思えません。
金融機関の貸し出し基準が緩和されるということは、一義的には、資金繰りが助かるだけの話で、損益の改善にはつながらないからです。

ただ、1997年の改定以来、ずっと金融機関の貸し出しが伸びないようなマニュアルだったのが、約10年ぶりに逆方向の改正が行われたことは、一つの転換点だと思うのです。

もちろん、消費者向けの融資は、これもかなり理不尽とも思える法改正のおかげで冷え込み、これが確実に個人消費を抑えたと思います。

ただ、大事なことは、これらは今後もずっと続く政策なのか、それともどこかで転換点を求め、再び景気の回復を図る段階がくるのかを見極めることです。

当然のことながら、景気回復が確認できたころには、株価はすでに上昇しているわけで、できるだけ早いタイミングでその転換点を測る必要があります。
それには、今までと流れが逆転しかねない政策の転換点をウォッチしておくことが必要だと思っていて、この記事を書いたのでした。

投稿: 伊木隆司 | 2010年1月23日 (土) 22時35分

会社員さま

たしかに、これだけでは景気回復につながるとは思いませんが、金融政策の転換点として捉えられないだろうか、という点に私は着目しています。

昨年、景気の落ち込み度合いに比較し、思ったよりも倒産が少なかった要因に、信用保証協会による緊急保証の増発があったと思います。

円滑化法は、これと同様に、中小企業の資金繰りを助け、地方経済の底割れを防ぐ効果はあると思います。

本格回復につなげるには、前向きの融資が増えなければなりませんが、そこまで行くにはもう少し時間がかかるのかもしれませんね。

投稿: 伊木隆司 | 2010年1月23日 (土) 22時45分

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