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2009年10月21日 (水)

官僚たちの秋

昨日は、午前中に監査委員の仕事で鳥取県庁へ。午後からは、事務所に戻って、8月決算会社の税務申告書の作成等。夕方に、ご来客が1件。

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【官僚たちの秋】

鳩山内閣発足から1カ月が過ぎて、何より不思議なことは、この不景気真っ只中で、何一つ経済対策が打ち出されていないということだ。

昨日書いたことの続きになるが、これが意図的なものなのか、それともただの無能なのかわからないが、私は財務省が大蔵省の時代から得意とする、典型的な景気抑制政策に入ったのではないかと思っている。

財務省出身の政治家(藤井財務相、古川副大臣)は別として、その他の政治家にはわかっていないのだろうが、おそらく、財務省主導のもと、日本の景気拡大を抑え、消費を抑制し、貯蓄を増やして、日本国として内部留保を増やす政策に再び入ったということだと思う。

為替を意図的に円高に振っているいるのもその一つの表れだろう。藤井大臣になって、円が1ドル90円を切る水準まで切りあがってきたのは、日米間で政策合意があったからだと言われている。

その意図するところは、一時的にアメリカ経済の回復をアシストするためだろうし、それは間接的に、アメリカ国債をもっとも保有している中国を助けることにもなる。

しかし、その間に日本国内の消費が活性化してしまうと、円高だから、庶民は海外旅行へ行くなど、国外に金を流出させてしまう。

そこで、国内に資金を留保しておくためには、「内需拡大が必要」という言葉とは裏腹に、消費を抑制し、内需を抑える必要があるということなのではないか。

「金は使うな」「貯蓄しとけ」ということなのだろう。

日本は1990年代、この手法で、難局を乗り切った。「失われた10年」と呼ばれるバブル崩壊後の低迷した日本経済だが、その間、個人金融資産は右肩上がりで増加し、輸出も増加。

低迷した経済指標とは裏腹に、日本は金融大国となり、実は、蓄えに蓄えた10年だった。

そして今、再び、そうした政策を実行されていることに、今、気が付いている日本人は、私と他にどれくらいいるだろうか。

ここまで深読みできている評論家はほとんどいない。大半の評論家は、「経済対策が足りない」というところまでしか言っていない。

そして、お決まりのセリフは、「政策当局が無能だ」であり、それ以上のつっこみをすることができていない。

私は、前々から日本の官僚は極めて優秀であるという前提を置いてものを考えている。庶民からみると「バカじゃないか」と思われる所業を見せておきながら、その実、着実に日本が生き残るための政策を進めているのが日本の官僚である。

つまり、「政策の優秀さ」と「それを表に出さないどころか、庶民を欺き、外国をも欺くしたたかさ」を兼ね備えた優秀さを持っているのが日本の官僚だ。

こうした政策を積み重ねることによって、日本は着々と力を蓄えていると思っていい。

「日本を痛めつけたアメリカは、もうすぐ潰れますよ。もう少しの辛抱ですから、頑張ってくださいね。」と、アメリカとの100年戦争を勝ち抜こうとしている、日本の官僚たちの声が私には聞こえる。

「敵をあざむくには、まず味方をあざむけ」は、戦略の基本である。日本の官僚の優秀さを知らないのは、実は日本人なのだろう。

ちなみに、今日の郵政民営化見直しのニュース。アメリカは、また日本に騙されたと思っていることだろう。

その前に日本人が騙されたわけだが(苦笑)。

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コメント

興と申します。以前、日興コーディアル証券が販売している投資信託(仕組み債?)の件で教えて頂いたことがあります。久しぶりにブログを拝見し、相変わらずの深い洞察に感銘いたしております。

さて、今回の先生のブログ記事によれば、財務官僚は政策的に国民に貯蓄させようとしているとのご指摘ですが、問題はその貯蓄で何を買うのか、換言すれば何で運用するかだと思います。もし米国債で運用するなら、ドル安でバカを見るのは日本国民で、米国側の狙いもそこにある様に思うのですが、その点についてはいかがでしょうか?

投稿: 興 | 2009年10月21日 (水) 18時34分

興さん お久しぶりです。
ごらん頂き、ありがとうございます。

国民が貯蓄したお金を何に使うのか、とのご質問ですが、ここから先はさすがに私にもわかりません。ただ、グローバルバブル崩壊後の世界で、しっかりと日本が生き残るために使われるのだろうということを予想しております。

戦後復興から経済成長の時期は、国民に貯蓄を奨励し、金融機関が吸い上げたその資金は、実質的に金融機関を支配している大蔵省が、重工長大産業へ傾斜配分し、驚異的な経済成長モデルを作りました。

バブル崩壊後の失われた10年では、日本の個人金融資産が増大した時期ですが、このときの貯蓄は、日本の銀行や郵貯が日本国債を買いまくり、大蔵はそれを一つは輸出企業の研究開発投資減税など、技術力強化に使わせ、輸出の増大に努めました。そして、ここでアメリカの製造業の息の根を止めたのです。

もう一つは公共事業に使い、日本のインフラ整備を一気に進めました。公共事業は無駄も多かったかもしれませんが、やはり国内に還流するよう使ったのです。

今でも日本政府の借金は、きれいに個人金融資産と両建てになっていて、日本全体で見ればきちんとバランスしています。だから、借金が多いので日本は危ないという説は、明確に誤解に基づくものです。

さて、今回の消費抑制&貯蓄増加政策で、財務省が何に投資をするのかですが、まず一つ考えられるのは、次のターゲットである中国で日本がしっかり儲けられるような布石を打つことが考えられます。

また、貯蓄が増えるということは、日本の金融機関(=金融庁&財務省の傘下にある)の資金が増えるということであり、財務省が国債を発行する余地が増えるということですから、少なくともいろいろな政策を講ずる余地が増えるということがいえると思います。

十分な答えにはなっていませんが、このあたりは、もう少し政府の打ち手を見ながら、分析していきたいと思っています。
(コメントをアップした後、一部、改訂しました)


投稿: 伊木隆司 | 2009年10月21日 (水) 20時43分

非常に示唆に富んだご回答を頂いたと思っています。

まず、旧興銀(現みずほコーポ)が何故 強い政治力を持っていたのか。その理由が分かった様に思いました。「戦後復興から経済成長の時期は、国民に貯蓄を奨励し、金融機関が吸い上げたその資金は、実質的に金融機関を支配している大蔵省が、重工業へ傾斜配分し、驚異的な経済成長モデルを作りました」という下りが、それを示している様に思います。つまり、大蔵省と興銀は一枚岩だったわけですね。道理で、都銀の企画部門やMOF担は出世するはずです。ここら辺のグループが一塊りになって、閨閥や門閥を形成しているのかもしれませんね。

次に、大蔵官僚は貯蓄で集めたカネを国内に還流する様に使ったという点ですが、米国の従属国だった日本が今後はともかくとして、今までよくぞ米国の圧力に屈せず、国内に還流させ続けることが出来たものだと感心させられます。とかく特殊法人への天下り云々と言った官僚の利権や既得権益が問題になりますが、それは飽くまでも国内での問題であって、米国や海外には魂を売ってないということなのでしょうか。ただ、今後、日本がさらに貯蓄を増やせば、米国からのプレッシャーは相当強まることが予想されますね。とにかく米国債を買ってほしいでしょうから。

それに、国内に資金を還流させたとは言っても、やはり公共事業の無駄使いは かなり問題がありますね。おそらく先生の県でも行政における事務事業評価が問題になっていると思いますが、そもそも公共事業は利益を生みません。赤字は全て税金で尻拭いです。にも拘わらず、そうした事業を増やし続ければ、何時かは破綻します。そして、今やもう限界にきています。

最後に中国ですが、これは米国以上に厄介な国だと思います。何せ、共産党が支配する国ですから。ただ、幸か不幸か、米国とは違って、日本と中国は交流の歴史があります。そこら辺が糸口になるかもしれません。そうすると、仏教なども勉強して、メンタリティの部分も含めて考える必要があるかもしれませんね。

投稿: 興 | 2009年10月21日 (水) 22時12分

この辺りの話がわかる方というのは非常に少数派でして、私にとっては有難く思います。一歩間違えば、「とんでも系」扱いですから。

まず、興銀の政治力に目をつけられたのは面白い視点です。その通りでして、他の財閥系は、それぞれ三菱がロックフェラー系(シティ、モルガン)、三井住友がゴールドマン系の外資と関係が深い中、みずほ系は国内系(大蔵系)の金融機関といえます。
だから、この数年間、みずほ銀行には常に買収の噂があり、それはまさに竹中氏によって画策された、国内は「2大メガバンクで十分」という話からくるものです。

それが、今日はっきりしたことは、三井住友出身の西川氏が更迭され、郵政民営化が見直されることで、外資系との力関係が、逆転したか、少なくとも五分五分まで引き戻されましたので、他行に比べてかなり下がっていたみずほ株については、今後、値動きに注目したいと思っています。

次に、大蔵官僚が資金を国内に還流させたことについて、天下り法人のことは、まさにその通りなのです。官僚の隠しポケットのようなもので、ここに貯めた資金は国会を通さないで使えますから、いろいろな工作資金に使えたわけです。
それは、特別会計にも同じことが言えますが、こうした隠しポケットが次々に見つかってきて、これからどこに隠すのか、あるいは隠さずにどう運用するのか、注目しているところです。

アメリカからの圧力はあったわけですが、これが実に巧妙に議論をすり替え、逃れてきたのが、1990年代でした。橋本通産大臣とミッキーカンターが通商問題(日米貿易摩擦)で激しくやり合っていたあのとき、「日本はアメリカへの輸出で儲けず、国内の消費を拡大して、内需拡大をせよ」と言われて、仕方なく国債を増発し、公共事業をせっせとやったわけです。
ところが、同時に金融不況をぶつけて(1997年ごろ)、地方の建設業だけ儲けさせて、東証の株価は上げさせない、という芸当を見せました。

ただ、小渕死去後の森内閣以降、徐々に牙城が崩れ、ついに小泉ー竹中という超親米内閣の時代に入って、株価を上げて、外資が日本で大儲けをしたのです。

しかし、そのときに日本政府が仕掛けたトラップが、円キャリートレードであり、アメリカ国債の大量購入でした。
それが後に、アメリカグローバルバブルの生成と崩壊につながり、同時にアメリカ国債の引き受け手となることで、アメリカの生殺与奪権を握ったのです。

「アメリカとの百年戦争」というのは、多分、官僚たちの中にはあるのだろうと思ってます。「まだ日本は負けてないよ。これから最終戦に入るよ」というところなのではないでしょうか。

そのときに、日本の重要なパートナーになるのが中国だと思います。
中国経済を今までODAなどで育ててきたのは、日本ですから。表向き、アメリカの目を欺くため、ずっと喧嘩しているフリをしていますが、その実、ずっと援助してきたのが日本でしょう。
「共産党」といっても、日本の共産党や、東欧に見られた共産党政府と違って、「平等主義」なんて概念は無いし、官僚が実質的に支配する体制という点では、日本と同じです。

中国は経済発展するときに、日本のマネをして、貯蓄を増やしてそれを政策的に国内投資に回し、さらには日本以上にアメリカ国債を購入し、今や、アメリカは中国の言いなりに動く国になりつつあります。
日本と中国が水面下で手を握って、打倒アメリカを画策してきた節があり、それがいよいよ表に出つつあるのが、鳩山政権の東アジア共同体ではないかと思います。これ、名前を変えた「大東亜共栄圏」ですよね。
あの戦争の時、満州でやった実験は、ずっと温存してきたのだということでしょうか。
その辺りは、おいおい、わかってきたことを書きたいと思います。

投稿: 伊木隆司 | 2009年10月21日 (水) 23時17分

いや、驚かされますね。物凄い洞察だと思います。

投資的な視点で言うと、政権と株価の関係が実に興味深いですね。その意味では、鳩山政権の場合、例の鳩山論文がアメリカで批判された様に、あまり親米的ではありませんから、今後の日本株のパフォーマンスは期待できないかもしれませんね。総選挙前には先物主導で現物を押し上げようする力も働いていたのですが、結局 TOPIXはあまり反応しませんでした。

鳩山論文は、先生の言われる中国との連携を視野に入れている様に受け取れますね。

ただ、一つ気になったのは、「しかし、そのときに日本政府が仕掛けたトラップが、円キャリートレードであり、アメリカ国債の大量購入でした。それが後に、アメリカグローバルバブルの生成と崩壊につながり、同時にアメリカ国債の引き受け手となることで、アメリカの生殺与奪権を握ったのです」の下りで、確かに おっしゃる通りかもしれませんが、このとき大量に購入したアメリカ国債に関しては膨大な為替の含み損が生じているはずです。これは日本にとっても痛手ではないでしょうか。日本国民の富が奪われたことにもなるのですから。

何れにしても、先生の こうした洞察を、今後どういう形でビジネスに活かすか。それをお考えになられたら、きっと成功されると思います。私の浅知恵では、やはり投資に活かすこと位しか思い付きません。でも、何かある様な気がしますね。

投稿: 興 | 2009年10月22日 (木) 08時51分

おっしゃる通りで、投資にとって、政治・外交の動きは重要です。政治がお金の流れを決めるからです。だから、投資家である私は、できるだけ投資がうまくいくように、政治のことも、その流れがつかめるように勉強してきたといえます。

日本政府が保有する約100兆円ほどのアメリカ国債ですが、この部分だけにスポットを当てれば、その通り、ドル安で日本は損を被るでしょう。
しかし、ドル安(=円高)は、日本の購買力が上がるわけですから、その他、大半の日本の金融資産には、対ドルで含み益が生じます。
重要なことは、トータルで負けないことですから、たかが100兆円の金融資産に傷がついても、日本としては何とかなるレベルだと考えられます。

また、そもそもこのお金は、日銀が輪転機を回し、外為特会に貸し付けて、財務官(大蔵のナンバー2)が為替介入と称して購入した米国債です。
つまり、もともと無から有を生んだお金です。
誰かが儲けたお金(税収など)をつぎ込んだわけではありません。
(日銀の機能やその巨大な権力については、リチャードベルナーが書いた「円の支配者」に詳しいです。)
しかも、その為替介入で円安をもたらし、輸出企業は当時、大儲けをしました。2002年から2006年ころの話です。
日本政府だけならともかく、オールジャパンでみれば、日本は十分に元をとっているでしょう。
ちなみに、そのときに中心的役割を果たした人物が、当時の溝口財務官であり、お隣りの島根県で今現在、知事をされています。

日本の富が奪われたと見せかけて、その実、十分な果実を日本企業にもたらし、そして今、アメリカの生殺与奪権を握っています。
ペーパーマネーで、ここまでやるんですから、数十兆円くらい損してもいいんじゃないかと思います。

そして、日本のマネをして、一生懸命お金を刷って、米国債を購入しているのが中国です。
紙爆弾でアメリカを沈める日が、もうすぐやってくるんでしょうか。そのときに日本がどんな影響を受けるのか(返り血を浴びるか)、コモディティがやっぱりお得なのか、などなど、今、研究中です。

投稿: 伊木隆司 | 2009年10月22日 (木) 13時09分

私が思うに、日本は今までの産業資本主義から、これからは知識資本主義の時代を迎えると思っています。実際、もう既にそうした時代に入っていると思います。アメリカは今後ともマネー資本主義あるいは強欲資本主義でいくつもりなのでしょうが。

日本人あるいは日本の官僚が磨いた知恵は、そもそも弱者であるが故に身に付けたものだと思います。そして、人口減少経済で「日本はもうダメだ」という議論もある中で、そうした逆境にも拘わらず、これだけの知恵の集積があれば、まだまだグローバール社会の中でも十分に生き残っていけそうですね。色々とご教示いただき、どうもありがとうございました。

投稿: 興 | 2009年10月22日 (木) 20時22分

日本は歴史上、中国という大国から何度も危機にさらされ、そこで生き残りのノウハウを習得したのだと思います。

大陸に挑んで返り討ちにあった白村江の戦いや、仏教伝来の影響を受け止めて、国内政治を一新した大化の改新、遣隋使、遣唐使のころの朝貢外交、元寇、日宋貿易(朱印船貿易)という朝貢外交、そして鎖国、などなど、大国の力をいかに受け止め、かわし、生き延びるかについては、日本の官僚がノウハウを積み上げてきました。

奈良の律令の時代から「大蔵省」とかあるわけで、そのころから官僚が日本を守ってきました。200年ほどの歴史のアメリカが攻めてきても、何とか生き延びてきたのはそのノウハウがあったからでしょう。
それをおそらく今、中国が参考にして、巨大帝国アメリカに対峙しているのが、今の歴史でしょう。

日本の産業資本主義の時代の技術は、かなりの部分を台湾や韓国、中国に伝授しましたから、平成の大東亜共栄圏をつくりながら、おっしゃるとおり知識資本主義に転換して、新しいノウハウを生み出す段階に入っているのだと思います。

楽しい議論を引き出していただき、こちらこそありがとうございます。

投稿: 伊木隆司 | 2009年10月22日 (木) 23時35分

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